じりじりと照らす太陽の光。親子やカップル達の声が雑音のように耳に入っていく。
左手にはあたたかなぬくもりを感じ、ぎゅっと握り締めてやる。
すると下からにこりと太陽に負けないくらい眩しい笑顔を向けられた。


「けんやくん、ひといっぱいやね」
「・・・・・せやな」


自分よりも凄く凄く小さな女の子。
はたからみたら兄妹だと思われているかもしれない。
謙也はの頭にかぶせてある帽子を整えてやると、うえからぽんぽんと軽く撫でた。


「暑いから気ぃつけや」
「うんっ」


ぎゅぅっと繋いだ手を握り返された事に微笑む。
小さいとはいえ、立派な俺の彼女の。
そう、今日は2人きりで休日のデートというやつだ。
新しく改装された遊園地に行きたいと言っていたを連れて、こうしてやってきたという訳だが・・・・・


「いやぁ、ほんま人がぎょうさんおるなぁ。、はぐれたらあかんから兄ちゃんと手繋ごな?」
「だから、なんで白石がおんねんっ!!!!」


自分とは反対側のの手を握ると、むかつくくらい爽やかな笑みを浮かべた白石がいた。
今日こそは2人きりで、2人きりで、デートを思っていた矢先に・・・・!


「謙也とを2人きりなんて出来る訳ないやろ」


しれっと言い切った白石にひくりと口の端が引き攣る。
白石蔵ノ介。同じ学校のクラスメイト。
そして、信じたくないがの兄でもある。
腹立たしい程ににべた惚れで毎回毎回なにかある事に邪魔をしてくる。


「・・・・白石。空気っちゅーもんを読めないんか?」
「空気?それなら謙也の方やろ。こうして兄妹みずいらずの外出についてきて」
「それはお前の方やっちゅーの!!逆やろっ!恋人同士の外出になんでわざわざ来るんやっ!」


白石に邪魔されたくないがために、今日のためにいろいろと練ってきた。
だってきちんと友達の家に遊ぶと行って家をでてきたはずだし、自分だって白石に気取られないように行動してきたつもりだ。
なのになぜこうも簡単にばれてしまったのか!!


「そんなん、のことで俺が知らないはずがないやろ?」
「うっわ、気持ち悪っ」


無駄に爽やかな笑みを浮かべる白石にうんざりとする。
シスコンもここまできたら極みやな・・・。はぁぁ。
ついでてしまった深い溜息に気づき、はおろおろと見上げる。


「けんやくん?具合悪いん?」
「・・・え、あ、大丈夫やで。それより乗り物のるか?」
「うんっ」


満面の笑みを浮かべて頷く。
あーくそう。やっぱり可愛い。
白石の行動の苛立ちを吹き飛ばしてくれるほどに、の笑みは謙也にとって癒しだった。
ついてきてしまったのは仕方がない。
この際、白石の存在を無視してと精一杯遊ぶことにした謙也だった。


「何から乗るん?」
「んっと、あれ、あれ乗りたいっ!」


が指をさしたのは、ここの遊園地の目玉でもあるジェットコースターだった。
凄い勢いで回転をしつづけている乗り物。
遠めからでも分かるそのスピード感に謙也も胸が弾む。


「お、ええなぁ。んじゃ行こか」
「うんっ」
「あかん」


早速ジェットコースターがある方へと足をすすめようとした矢先、隣から静止の声がでる。
ぐっとの手を掴んで前に進ませようとしないのはもちろん白石だった。
当然、つながっている謙也の足も進めずに止まる。


「・・・・何や、白石」
「あんなんが乗れる訳ないやろ。、乗るならあれにしな」


そうして指をさしたのは先ほどのジェットコースターとは違ってかわいらしくくるくるまわっているメリーゴーランドだった。
確かにと同年齢くらいの女の子たちがいっぱい並んでいる。だが・・・・


「まさか白石の口からこんな事をいうのを聞くはめになるとはなぁ・・・・」
「でもくらお兄ちゃん。はあっちが乗りたいのぉっ」


ジェットコースターに乗ることを諦めたくないのか、泣きそうになりながらは訴える。
さすがにの泣き顔には弱いのかうっと言葉を詰まらせた白石にニヤリと笑う。
その隙を狙って白石からの手を離させると、の両脇に手をさしいれ抱き上げる。


「っちゅー訳や。ほな、俺らは先行っとるで〜」
「あっ!謙也!!待ちぃや!」
「待てと言われて待つやつなんかおらへんで〜」


足の速さなら白石には負けない。
絶対に追いつかれないという自信があるから、謙也は腕に抱いたを見ると笑いかけた。


「・・・やっと、2人きりになれたな」
「・・・うんっ」


頬を赤く染めたが可愛くて触れるだけのキスを頬に落としてやる。


どうやら今日は白石に邪魔をされる事はなさそうだ。










初デートで死にかける








2009.10.14


あれ、死にかけてない・・・