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太陽みたいに明るいキミは童話に出てくるお姫様みたい
知ってるかい?
童話の中ではお姫様は危険な目に合うんだよ?
お姫様ばかり危険な目に合うなんて酷い話だと思わない?
だから、俺はその危機から救う為
閉 じ 込 め る 事 に し た ん だ
そうすればお姫様は危険にあう事はないだろう……?
暗い暗い室内。
夕方くらいの時間だろうか。
僅かに入ってくる光が部屋の中を少しだけ明るくする。
電気もつけず、部屋の主はじっと一人のお人形を眺めていた。
「……綺麗だよ、」
椅子に座ったまま目を瞑っている少女。
白く透き通った肌。長い睫。
少し化粧の施されている少女はまさに美しい。
その閉じている目を開けたらどれだけ愛くるしい事か。
だが、その瞳を見る事は二度と訪れない。
「そうだ、もう夜になる。も着替えないとね」
男、芥川慈郎はと言われた人形を椅子から床に寝かすと着ている服を脱がしていった。
クローゼットから真っ赤なワンピースを取り出すとそれをに着させていく。
「は肌が白いから赤が映えるよ……あぁ、かわE〜」
着替え終わったをぎゅっと抱きしめる。
いくら話しかけても、抱きしめても、からの返答は無い。
それでも慈郎は気にせずを抱きしめ続ける。
の頬に自分の頬を寄せ、擦り合わせる。
「前みたいに話してくれるも好きだったけど、俺は今のの方が好きだよ」
頬に片手を添えて目を細めてを見る。
触っても冷たい頬。
床には白い粉が散乱していた。
「え、良いの?」
を部屋に誘ったのは丁度2週間前くらい。
部屋に大きい羊のぬいぐるみがあると言ったらは食いついてきた。
彼女は大のぬいぐるみ好きだからね。
「うん、良いよー。俺もに見て欲しいし!」
「本当?やったー!ジロー君のお気に入りって凄く気になるなぁ」
笑顔でそう返した。
何も疑ってない本当に無垢な笑みに爽やかな笑みを返しながらも、俺は心の中ではほくそ笑んでいた。
が部屋に入ったらこっちのもの。
俺が一番欲しいぬいぐるみ……いや、人形は自身なのだから。
「んン……ッ?あれ、なんか……」
早速部屋に来たに飲み物を渡した。
その飲み物の中には勿論、人形にさせる為のクスリが入っている。
は喉が乾いていたのか一気にそれを飲んだ。
眠そうに目を擦るの頭に手を置く。
「、眠いの……?」
「うん……っ…ちょっと、寝ても良いかな?」
「勿論、良いよ」
ゆっくりとの頭を自身の膝の上にのせる。
すると、スグに目を閉じた。
聞こえてくる筈の吐息はしない。
眠ったを見て俺は一人、笑った。
「あははっはははははっ……!やった……!ついにこれでは……っ!」
彼女の胸元に手を当てると、その鼓動は動いてはいなかった。
は永遠の眠りについたのである。
そして
「俺だけのお姫様になったんだよ」
冷たい唇に唇を落とす。
慈郎は幸せそうに笑う。
だが、その顔はやつれていて長い間何も食べていない事を物語っていた。
傍らには光る携帯電話。
何件もの着信履歴。
だが、今の慈郎には以外のものは目に入っていなかった。
眠り姫は永遠に目を、覚まさない。
薬 物
2007.8.9