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甘い蜜に惹かれて集まる蝶
どんなに拒んでも集まってくるのなら
集まってこないようにするしか無いだろ?
甘い蜜ならば、甘くなければ良い………
体育の授業の為、ジャージに着替えている時。
友達のじっと見る視線には首を傾げると、友達はの項を指差して何気なく言った。
「って愛されてるよねー」
最初何の事を言われているのかさっぱり分からなかった。
眉間に皺を寄せて訝しむに友達は苦笑い。
「キスマーク、付いてるよ」
「えっ!!?」
「何だ、気付いてなかったの?」
体操着に着替え終わった友達は髪を縛ると不思議そうに見返してきた。
ついでに「今日はジャージ着ないとね」なんて冗談めかしながら。
は指摘された項に手を当てて、小さく頷く。
「ヤるのは良いけど程ほどにしないと妬いちゃうぞー」
「なっ…バカ言わないでよっ!」
「あはははっ!ごめんって」
顔を真っ赤にして怒るに軽く謝る。
その事にむっとしながらも、は小さく溜息をついた。
の表情は暗かった……。
昼休み、友達と雑談しながらお弁当を食べていたの元に一人の男子が訪れた。
「さん、ちょっと今良いですか?」
顔は見た事があった。
同じ学年の違うクラス。名前は……知らない。
驚いて固まってしまっているに友達は冷やかすように口笛を吹く。
「ひゅー!ってばご指名?」
「ちょっと!冷やかさないでよ!」
「ごめんごめんっ!でもさ、良いの?彼…」
ある一角に視線を移しながら友達は言った。
友達の言う彼、とは同じクラスの仁王雅治。の恋人だった。
は仁王に視線を移す。
仁王はクラスの人たちと楽しそうに話している。
の視線には気付いていないようだ。
「……うん、良いよ。お話だけだろうし…」
「…あ、そ。んじゃ、行っといで」
ひらひら、と手を振る友達を軽く睨んでから席を立つ。
少し離れていた所に立っていた男子に声を掛けると、2人は一緒に教室を出て行く。
の後姿を、仁王は横目で見ていた。
屋上に着くとは男子から告白をされた。
大体想像はしていたが、はっきりと言われると少し申し訳無く思う。
答えは断ることしか出来ないから。
「……ごめんなさい」
「い、いえ…謝らないで下さい。僕が勝手に伝えた事だし」
男子は照れたように笑うと俯く。
は困ったように眉尻を下げると、もう1度「ごめんなさい」と頭を下げた。
の対応に慌てたように男子は声を上げる。
「あ、頭を下げないで下さい…っ」
「でも……」
「……その代わりと言っちゃなんですが、その、思い出くれませんか」
男子の言葉に驚いては顔を上げた。
真剣な眼差しで見てくる視線が痛い。
何だか怖くなって少し後退り問いかける。
「え、お、思い出って……?」
「思い出は……」
「え……んぅっ!?」
行き成り肩を捕まれ、そのまま唇を合わせられた。
突然の事に体が動かなかったは逃げる事も忘れ、目を見開いて固まる。
男子は動かないをいい事にそのまま地面に押し倒すと上に覆いかぶさった。
運が悪く、丁度屋上には人が居ない。
背中が地面についた時、唇が離れた。
長いキスから解放され、は酸素を求めるように大きく口を開く。
「はぁっ……え、ちょ、ちょっと……何…っ」
「さん……」
「い、いやっ……」
いつの間にか両腕を上で一纏めにされていた。
体を捩り、逃げ出そうと試みるが男の力に勝てる訳が無かった。
一つずつブラウスのボタンを外され、これからされる行為にはゾッとする。
ブラウスのボタンを全部外された所で、男子は驚いたように声を上げた。
「これ……」
「いやっ!放してぇぇっ!!」
「君っ!何をしてるんだ!」
突然の第三者の声に2人はびくり、と体を硬くした。
声に反射したように顔をそちらに向けるとメガネを押し上げた柳生の姿が。
はその姿を見てほっと息を吐いた。
大丈夫。助かった……。
「彼女は嫌がってるのでは無いのですか?」
「……ちっ」
男子は急いで体を離すと、その場から逃げ出すように屋上から出て行った。
残されたのはと柳生。
柳生は横になっているの元に来ると、跪いて体を起き上がらせる。
「大丈夫ですか?」
「あ、有難う……柳生くん」
「いえ、当然の事をしたまでですよ」
にこり、と口元を上げた柳生を見て本当に安心した。
あのまま犯されていたのでは無いのかと思うと今でも背筋が凍る。
開かれたブラウスを胸元に寄せると、は柳生の顔を見て微笑んだ。
「本当に有難う、柳生くん」
「止して下さい。あまり言われると仁王くんに睨まれますからねぇ」
「あ……」
仁王という言葉には俯いた。
この事を仁王が知ったらどうなるんだろう……。
ぎゅっとブラウスを寄せた腕に力を込めると俯いたままは口を開いた。
「柳生くん、この事は雅治には内緒にしておいて」
「何故です?」
「だ、だって……こんな事、雅治に知られたら何て言われるか……」
「そりゃ、お仕置きじゃよ」
近くで聞こえた声には目を見開く。
確かに今の声は仁王のもの。一体どこから聞こえてきたのだろうか。
ゆっくりと、俯いていた顔を上げると柳生と目が合った。
その瞬間、強く体を引かれ、気付いた時には唇が触れ合っていた。
「んンッ…!?」
「こんな人目がつく様な場所で浮気とはいかんのぉ」
「…っ…ま、さはる……」
掛けていたメガネを外し、ウィッグを取った柳生は正に仁王だった。
ブラウスを握るの手を掴むと開かれたブラウスを片方だけ脱がす。
「くくっ……さっきの男、これ見て相当驚いとったのぉ」
「や、やだっ……止めてっ!!」
晒されたの上半身には沢山の痕がついていた。
肌色というよりは赤に近いの肌にそっと指を滑らす。
「……っ!」
「おっと、ここが消えかかっとる」
薄くなってきている一箇所を見つけると、仁王はその場所に上乗せするように強く吸い付く。
掴まれた片腕を震わせては体を跳ねらせる。
「やっ…放してよ、雅治……っ」
「浮気するの方が悪いんじゃよ」
「あれは…っ!!」
浮気じゃない、と言う前に仁王がまた肌に吸い付いた為に、声は悲鳴にしかならなかった。
体を震わせて耐えるに仁王は目を細めて赤い痕を舐める。
「誰も手を出せないようにしないとなぁ、」
「いや……っ」
「お前さんは俺のモンじゃよ……」
怯えたような目で見上げてくるを見て仁王は口の端を吊り上げた。
所有の印
2007.7.30