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ずっと 見てたよ
俺の事を意識してくれないかって
でも いつまでもキミは気付いてくれないから
少し 行動にうつしてみる事にしたんだ
「ー早くー次体育やで?」
「うんっ…今、行くよー」
体操着を持って教室の扉の前で立っている友達に急かされながらも慌てて準備にとりかかる。
先日、東京から引越しして転入してきた。
四天宝寺中学という大きな学校で不安を抱いていただったが、クラスの人は皆良い人ばかりですっかり馴染みこめていた。
「あ、あった…っ!」
「遅いっ!早う行くで!」
「うんっ」
体操着の入った袋を抱きしめながら体育館へと急ぐ。
体育館の中にある女子更衣室に入ってみれば既に着替え終わっている子もいる。
空いているスペースを見つけると、2人は急いで着替え始める。
「のせいで遅れたらどーしてくれんのや」
「ご、ごめん……」
「えーから、早う着替え!」
「う、うん………ん?」
ブツクサと文句を言いながらも面倒見の良い友達に感謝しつつも着替えるべくTシャツを取り出した。
しかし、そこで違和感を感じる。
中に入っているのはTシャツとブルマだけの筈なのだが、明らかにおかしい感触。
サラサラのTシャツが何故かパリパリとしていた。
まるで何かが乾いたような感じには首を傾げる。
「どしたん?」
「んー…なんかTシャツが変なの…」
「どれ?」
友達がTシャツをの手から奪い取るとぺたぺたと触る。
眉間に皺を寄せると、Tシャツを再びに戻した。
「確かに変やなぁ」
「だよね?知らない間に何かつけちゃったのかな…」
「大方、枕と間違おて涎でもつけたんとちゃうか?」
「なっ…!そんな事ないもん!!」
ケラケラと笑う友達にむっとする。
反論しようと口を開くもあっさりと友達はかわして、下着姿だったにそのままTシャツを被せる。
「……ぷはっ!」
「えーからとっとと着るっ!もうチャイム鳴るで?」
そう言った途端、遠くでチャイムの鳴る音が聞こえた。
更衣室には2人しか残っていない。
「ほら、言わんこっちゃない!、行くでっ!」
「わっ、待ってよー!」
結局そのままはそのTシャツを着て体育へと出た。
感触に違和感を感じるだけで気になる事も無い。
は不思議に思いつつも特に疑問を持たなかった。
昼休み、体操着を持って教室を出て行こうとするを引き止める。
「どしたん?」
「えっと、さっきのTシャツ洗ってこようと思って」
「あーあのパリパリTシャツなぁ」
友達は思い出したかのように笑って言う。
は顔を赤らめながら頷く。
「なんか気になるから洗ってくる」
「あ、そ。んじゃ、体育館裏の所に行くとええよ」
「え?体育館裏?」
首を傾げて言うと友達は「せや」と頷く。
「あそこなら人目つかんから思う存分洗ってこれるやろ」
「あ、ありがと…っ!」
「気ぃつけてぇな」
手を振り、を見送る。
はそれに答えるように手を振り返すと笑顔で教室を飛び出していった。
その後姿を見て、小さく溜息をつく。
「時々、あそこで告っとるやつおるからなぁ…気ぃつけるんやで、」
友達の声はには届かなかった。
駆け足で体育館裏へと目当ての水飲み場を見つけてほっとする。
早く洗って帰ろう。そう思ったは水飲み場まで走り寄ると、蛇口を捻ろうとする。
そこで、人影があるのを見つけた。
ちょっとした好奇心ではそっと人に見つからないように、その影へと近づく。
その時
「好きです」
女の子の声が聞こえてドキリとした。
自分に言われた事でも無いのにこうもドキドキとするのは何故だろう。
この位置から女の子は見えるが相手の男の子は見えなかった。
「ごめんな、俺、別に好きな子おるねん」
「……そ、うですか」
女の子は俯いて「失礼します」と言うと校舎の方へと走っていってしまった。
まだ背が低い。恐らく年下の子なんだろう。
はいつまでも見てる訳もいかない、と思い頭を引っ込めた
「ちゃん」
「!!!」
瞬間、名前を呼ばれて先程よりびくり、と体を固まらせる。
ザッザッと土を踏んでこちらに近寄ってくる気配がある。
だが、は振り向く事が出来なかった。
「盗み聞きはあかんで?」
「っ!白石、くん……」
の背後からひょっこりと顔を覗き込ませるように前へと回り込んできたのは同じクラスの白石蔵ノ介だった。
びっくりしたは至近距離にある白石の顔から目が離せない。
目を大きく見開いたを見てくすくす、と喉の奥で笑うと、白石はゆっくりと顔を離した。
「ちゃんがここにおるのって珍しいなぁ。なんかあるん?ひょっとして、告白?」
「え、あ、ち、違うよっ!ちょっと洗い物を……」
「洗い物?」
聞き返してきた白石に首を縦に振る。
胸に抱いていたTシャツを見せて、近くにある水飲み場を指差す。
「これを洗いに来たの。そしたら白石くんが…」
「そりゃ、悪い事したなぁ。………それ、洗うん?」
「……?そうだけど…」
念を押すような聞き方には少し怯む。
その時の白石は妙に怖かった。
だが、それも一瞬の事でいつもの柔らかな白石に戻るとに笑いかける。
「ま、程ほどにな?あんまり夢中になって洗っとると授業遅れるで?」
「うん、ありがと。……でも、びっくりしちゃったな」
「ん?」
「白石くん、モテるんだね」
自分で言ってて恥ずかしくなってきたのか、はTシャツを抱きしめると俯く。
そんなを目を細めて見つめると、白石は水飲み場の方に歩いていく。
「そないな事あらへんで?今回はたまたま、や」
「たまたま?」
もその後を追って水飲み場へと行く。
背中を凭れ掛けるようにして立つ白石を見ながらTシャツを洗うため蛇口を捻った。
はTシャツを洗いながら、白石はそれを見ながら、会話は続く。
「せや。そーゆーちゃんも結構モテるとちゃうん?」
「えっ!?な、何で…」
「ちゃん、評判ええで?白くて小っこくて小動物みたいや」
ゴシゴシとTシャツを洗う手を止めて白石を見る。
その時、白石と目が合った。
じっと見つめてくる白石の目が何だか恥ずかしい。
急いでは目を逸らすと、手元に集中した。
「……それって褒めてるのかよく分からないよ…」
「ん?かわええって言うただけやで?」
「か、かわ……っ!」
「あ、もう、ええとちゃうん?」
白石は勝手に蛇口を止めるとからTシャツを奪い、水を絞る。
そして大きくパンパンッと横に引っ張ると良い感じになったTシャツを見て一人頷いた。
「ちゃん、綺麗になっとるで?」
「………」
「ちゃん?」
「えっ!……あ、ありがとっ!」
手元に戻ってきた少し湿ったTシャツ。
だけど、先程のパリパリよりは全然良い。
は先程可愛いと言われた事に照れて頬を少し赤く染めていた。
白石からTシャツを受け取ると、脱兎の如くそこから逃げ出す。
「えと、それじゃ、ありがとっ!」
タタタッと軽く音を立てながら走り去るの後姿を見て、白石は一人ほくそ笑んだ。
「やぁーっと終わったー!」
先程授業の終わりを知らせるチャイムが鳴ったところ。
教室を出ようとしていたを捕まえる。
「なぁなぁ、放課後遊びに行かへん?」
「うん、良いよっ」
「よっしゃ!んじゃ、カラオケ行こうなっ」
この後の予定を話しながら玄関へと向かう。
放課後のせいか、生徒達は部活へと行っておりあまり校舎には残っていなかった。
玄関まで来て靴を履こうとしたとき、はある事に気付く。
「あっ!ノート忘れた!」
「えぇ?何してんのーー」
「ごめんっ!ちょっと取りに行ってくるよっ」
脱いだ上靴をもう1度履きなおすと急いで教室へと向かった。
よりにもよって宿題に出されている英語のノート忘れるなんて…!
友達を待たせない為にも階段を駆け上がる。
教室まで着くと特に注意もせずに扉を開けた。
ガラッ
そこでは中を見て目を見開いた。
扉を開けた手が僅かに震える。
「なんや……ちゃんか……」
教室の中には白石が居た。
ただ、白石が居ただけではここまでは驚かない。
問題は白石の状況だった。
の椅子に座っている白石。
手にはの忘れた英語のノート。そして、もう片方の手で自分自身を扱いていた。
白石を見たままぴくりとも動かないを見てニヤリと笑う。
「ちゃん、おいで?」
「………っ」
話しかけられてはびくりと体を震わせた。
そのまま逃げ出せば良いのに、逃げ出す事が出来ない。
「おいで?」
聞いているようで、聞いていない。
拒否権はには無かった。
白石の声はまるで魔法のようで、はそのまま教室の扉を閉めると白石の方にゆっくりと歩み寄る。
しっかりと握られている英語のノートと、こちらを見たまま扱く手を止めない白石とを交互に見て、困ったようには声をだした。
「白石、くん…っ」
「っ!、ちゃん……っ…くっ」
肩を揺らして、白石は全てを吐き出した。
勢いよく出たそれは、持っていたノート、の机へと掛かる。
そして、スグ横に立ち尽くしていたの腕を掴んだ。
「はぁ…っ……いつもより早かったな……ちゃんに見られとるからかな?」
「っ!やっ……」
熱っぽい目で見上げられては咄嗟に顔を逸らす。
掴まれた腕を引こうとしたがそれよりも先に白石が腕を引く方が早かった。
はそのまま白石に覆いかぶさるように倒れこんだ。
バサリッと音を立てて落ちたノートが目に入る。
ノートを持っていた包帯を巻かれた左腕がの腰に回る。
「知らなかったやろ?自分の席で他人がオナニーしとったなんて」
「!!」
「見てみぃ……ほら、ココ。もう硬くなってきとる……」
「やぁっ!」
掴まれた腕を白石自身へと導かれる。
指先に触れる熱いモノ。
初めて触る男のモノには顔を真っ赤に染める。
腕を引こうにも力強く押さえ込まれていて動かす事が出来ない。
「ちゃん……かわええ」
「きゃっ!」
座っていた白石が行き成り立ち上がりはよろける。
そのを支えるとスグに机の上へと押し倒した。
投げ出された足の間に白石はすかさず入りこむ。
流石にこの後される行為が分かったは慌てて起き上がろうとする。
が、両手首を掴まれて動く事は出来なかった。
「っ…!」
「ちゃんが悪いんやで?体育の時……」
「え……っ?」
ぽつりと呟いた白石の言葉に思わず聞き返す。
涙目で見上げるの目を見つめながら白石はぺろりと自分の下唇を舐めた。
「俺の精液がかかったTシャツ着て授業受けとるからや……えらい興奮したわ」
その言葉を聞いてはこれでもかという程に目を見開いた。
の反応が面白かったのかくつくつと笑う。
は目の前に居る白石を見ながら昼休みの出来事が頭の中に蘇ってくる。
『………それ、洗うん?』
あれは、知っていて聞いたんだ…。
ショックで呆然としたまま動かないの胸ポケットから携帯を取り出す。
白石はそのままアドレス帳を開くと、ある人物に電話をかけた。
「ちゃん、これから用事あるんやろ?」
「………!そ、そう…だから……っ」
「だから、代わりに俺が断っといたる」
目を細めて笑った白石には言葉を失くした。
電話からは、玄関で待ちぼうけをくらっている友達の声が聞こえる。
白石は二言、三言話した後携帯を閉じての顔の横に置いた。
「ちゃん、可愛がってやるで…?」
誰もいない教室で白石は満足そうにを見下ろしながら囁いた。
まとわりつく白い粘着液
2007.8.1