アイシテル
アイシテル
キミノ事以外考エラレナイ程ニアイシテルイルンダ
ダカラ キミモ
俺以外考エラレナイクライニナッテヨ
「それなら、思い切って告白しちゃいなよ」
友達からの恋の相談のメール。
何とも無い、思春期の子ならある普通なやりとり。
人の恋愛というものは、何でこうも楽しいものなんだろう。
相談を聞いたり、相手の事を思っている顔を見たり。
恋愛は自分がしていなくてもとても楽しい。
忙しなくメールの返信に没頭するの元に1件のメールが届いた。
は特に気にした様子もなくそのメールを開く。
**新着メール 1件**
No.001
07/28 21:53
from 名前
Sub (non title)
好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き
「きゃぁぁぁぁっ!」
はメールの内容を見た瞬間、携帯を放り投げた。
ゴツッと鈍い音を立てて携帯は地面に落ちる。
目を見開いて、携帯を見つめた。
何?何なの……!!?
携帯のメール画面いっぱいに書かれた好きという文字。
がくがく、と震えだす体を止める事は出来なかった。
ピロピロピロリ………
メールの着信を知らせる音。
はゆっくりと、携帯に近づきそっと拾う。
新着メールを確認するため、もう一度メールボックスを開くと、そこには
先程と同じメールが届いていた。
携帯を握り締めたまま氷のように固まる。
それから3分置きに必ず同じメールが届いた。
「何……?いや、怖い……っ!」
は携帯の電源を落とすと放り出した。
布団の中に潜り込むと、自分自身の体をきつく抱きしめる。
大丈夫、大丈夫……見なきゃ平気、だから……
はそのまま眠りについた。
大人しくなった携帯に恐怖を抱きながら―――。
次の日、寝不足気味では学校に登校した。
目の下に出来たクマはコンシーラーで隠したが、それでも表情までは変えることが出来ない。
小さく欠伸をしていた所に隣から笑い声が聞こえた。
「でっけぇ、欠伸」
「えっ………あ、切原くん…」
隣の席の切原は頬杖でを見ながら笑っていた。
変な所を見られてしまったは恥ずかしさで僅かに頬を染めながら俯く。
「もぅ……見ててもそういう事は言わないでよね」
「わりぃって。でも、何?寝てないわけ?」
「………」
無言でいるに不思議そうに首を傾げる。
その顔は少し青ざめていた。
切原はそんなを見て励ますように口を開いた。
「何かあったんだったら、聞かねぇけど、あんま無理すんなよ」
「………」
「相談くらいならのってやれるし、なっ」
「……うん」
下を向いたままは小さくありがとう、と呟いた。
切原がギラギラと目を光らせていた事に気付かずに―――。
変なメールが届いて今日で5日目が過ぎようとしていた。
メアドを何回も何回も変えても届くメール。
しかも必ず3分置きにそのメールはの元に届く。
しかし、メールが届くだけで自身に被害は無い。
その所為か、少しは冷静にはそのメールの対処が出来るようになってきていた。
ピロピロピロリ………
今日も届く恐怖のメール。
は部屋で友達とメールのやりとりをしながらそのメールを開いた。
変わらず、背景が黒く、文字は赤色の好きという羅列が続くメール。
は急いでそれを削除すると、友達とのメール交換に没頭した。
外は雨。サァーッという雨の音が聞こえる。
友達と恋の話で盛り上がり、つい時間を忘れる。
気付いた時には22時を回っていた。
「あ、ヤバ…お風呂、入らないと」
ベッドで寝転んでいたは起き上がり時計を見る。
そして、ふとある事に気付いた。
そういえば……
「メール、来てない……」
先程のメール以来不審なメールは届いていなかった。
ひょっとして、止まったのだろうか。
安堵して携帯を充電器に差し込もうと手を差し伸べたとき
ピロピロピロリ………
無機質な電子音が響いた。
その音を聞いて伸ばした腕をぴたり、と止める。
まさか、まさかまさか………。
恐る恐る携帯をとり、メールを開く。
**新着メール 1件**
No.001
08/02 22:42
from 名前
Sub (non title)
ア イ シ テ ル
ア イ シ テ ル
ア イ シ テ ル
ア イ シ テ ル
ア イ シ テ ル
ア イ シ テ ル
ア イ シ テ ル
ア イ シ テ ル
内容は前とかわり、アイシテルという文字が沢山書かれていた。
震える指でスクロールを下に下げていく。
コ ロ シ テ シ マ イ タ イ ク ラ イ ニ
ア イ シ テ イ ル ヨ
イ マ ア イ ニ イ ク カ ラ ネ
「えっ……?」
がメールを最後まで読んだ時だった。
急に部屋の明かりが消える。
頼りになる光は手元に持っている携帯だけ。
ブレーカーが落ちたのだろうか。
は洗面台の方に向かおうと足を動かす。
ガバッ
しかし、がブレーカーの所へ行く事は無かった。いや、出来なかった。
後ろから誰かにきつく抱きしめられる。
「きゃぁぁぁぁぁっ!!」
暗いため勿論、相手が誰か分からない。
は驚き、その場に携帯を落とした。
腕の力が強くては身動き一つ出来ない。
「い、いやぁっ……離してぇぇ…っ」
「……」
「!!」
突然、耳元に囁かれてはびくり、と体を揺らした。
その様子に後ろにいる者は満足げにくつくつ、と笑う。
にはこの声に聞き覚えがあった。
この声………っ!
目を見開いて固まってしまっているの耳を舐めると、内緒話をするようにそっと囁いた。
「ね?約束通り、会いに来たでしょ」
を抱きしめながら、切原赤也は楽しそうに笑った。
精神破壊
2007.7.23