先月のグリフィンドール対スリザリンの白熱したクィディッチ戦が終わり月日もとうとう12月。

朝が冷え込みだした冬が来て、ますます寝起きが悪くなる今日この頃。

12月といえば今年最大のイベントが待っている。

そのイベントが近づいて大人しくしているような人間では無い。


「もうすぐクリスマスダンスパーティーよ!!!」


鼻息荒く拳を振りかざし意気込んだのはグリフィンドール寮生五年の。

今年9月に異例の編入を遂げた日本人の魔女である。


「クリスマス・・・」

「パーティー?」


の大声に反応したのは同じく編入してきた二人。

のんきにベッドで寝転がり、ファッション雑誌を見ながらお菓子のかぼちゃパイを頬張ると、大好物の紅茶を飲みながらイスに座り読書に没頭していただ。

はつかつかとのベッドに近寄ると今まさに食べようとしていたかぼちゃパイを横取り、それを自分の口へと放り込む。


「あああっ!!最後のパイだったのに〜!」

「むしゃむしゃむしゃ」

「ひ、ひどいよ、ちゃん!」


わんわんと後ろで泣き言を言うを放って、次にの机へと近づく。

そしての手から読書中だった本を奪うと高らかにもう一度叫んだ。




「もうすぐクリスマスダンスパーティーよ!!!」










波瀾のクリスマスパーティー










「いだっ」


ペシンッという軽い音の後には叩かれた頭をおさえる。

奪った本は持ち主の元へと奪い返されていた。


「・・・・私の読書を邪魔するからよ」

「スイマセン」

「それで?なんなのよ。そのクリスマスダンスパーティーっていうのは」


読書をする気が失せたのか、読みかけの所にしおりを挟むとは椅子に座って話の続きを促した。

も起き上がってきちんとベッドに座るとの話に耳を傾ける。

ごっほん、とワザとらしく咳払いをした後、はキラキラと満点の星のように瞳を輝かせて言った。


「何ってその名の通りよ!クリスマスダンスパーティー!男子生徒にエスコートされて、甘々な一夜を過ごして踊り狂う日!」

「・・・踊り狂うって・・・・」


呆れた視線がちくりとささるが気にしない。

の言葉には首を傾げながら訪ねる。


「パーティー・・・踊るだけなの?」

「まさか!豪華で美味しい料理にスイーツ!食べ放題!」

「食べ放題!?」


スイーツの話にガッツリ食いついてきたにふふんと鼻をならす。

その様子にまたも呆れた溜息をつく。


「・・・、本当に甘いものが好きね」

「うん!甘いものはなんでも食べたい!私パーティーに行きたいよ!」

「ちっちっちっ。甘いぜ・・・マシュマロにチョコを突っ込んだくらいに甘いぜ、ちゃ〜んっ」

「何その例え」


の冷静なツッコミもなんのその。

はニヤニヤと笑いながらを見下ろす。


「言ったでしょ?クリスマスダンスパーティーは、男子生徒のエスコートが必須なの!誰か男の子に同伴してもらわないとダメ!分かる? あんた一人で会場につっこんでみなさいよ。『やっだ〜!ちゃん。もしかして一人で来たのぉ〜?誰にも誘われなかったとか、な〜んて可哀相な子なのかしら〜ん』って言われるのがオチよ!!」

「そ、そんなぁ・・・」


眉尻を下げてしゅんと沈んでいくを見て、ケラケラと笑うにはもはや溜息しか出なかった。

いろんな所をツッコんでしまいたいのをぐっと抑えてはに問う。


「大体パーティーについては分かったわ。それで?は何が言いたいのよ」

「さっすがー!分かってるじゃーんっ」


パチンッと指を鳴らすといらないウインクを飛ばしてくるのを華麗にスルーする。


「恋人たちにとってもこれは絶対に外せない大イ・ベ・ン・ト!それはつまり私とセブルスにとっても外せない一大イベントなのよ!!」

「「・・・・・・それで?」」


返ってきた返事はなんとつれない事か。

二人の反応に哀れみの者を見るかのような視線を送ると深い深い溜息をこれみよがしに零す。


「!あんただって愛しのレギュラス君と一晩一緒にいられるなんて夢のようでしょ!?」

「う・・っ」

「!あんたも!最近ちょっと気になる男の子☆ポジションに昇格したブラックと少しでも近づけるチャンスなのよ!?」

「・・・・」


痛い所を突かれて口籠もる二人にニヤニヤとしながら更に追い討ちをかけた。


「ブラック兄弟って人気だしねぇ〜?競争率高そうよね〜?うかうかしてたらどこぞの馬の骨か分からない女共にフォイフォイ持ってかれちゃうかもね〜!」

「「・・・・」」

「だ・か・ら!私が教えてあげたんでしょっ」


腰に手をあてて二人に対してビシッと指を指す。

しかしそれもすぐに下ろすと、ふと柔らかい笑みを浮かべた。


「・・・折角のクリスマスパーティーじゃん?彼らと一緒に過ごせるクリスマスなんて本当何億分の一ってくらいに奇跡な事なんだから、めいいっぱい楽しまなきゃっ。 だから私がぼやぼやしてる二人に渇を入れてあげたのよっ。・・・・二人に思いっきり笑っていて欲しいから」

「ちゃん・・・」


友を想う優しい言葉にじーんと心打たれて涙目になっている。


「そ、そうだよね・・・また来年があるとか全然分からないし。いっぱい楽しんだもの勝ちだよね・・!」

「確かにの言い分も一理あるわね。・・・・たまには、ゆっくり羽を広げてみるのも悪くないわね」


二人の言葉を聞き満足げに頷くとは早速と言いながらローブを羽織り始める。

まだ朝食まで時間があるのにどこに行くのかと訪ねてみればニッと笑って杖を懐にしまった。


「どこって決まってるじゃない!この流れで私が行くのはただひとつ!セブルスの所よ!!」

「・・・あ!なるほどっ。セブルスにダンスパーティーを誘ってもらう為に声をかけにいくんだね」


納得したように頷いたとは違い微妙な表情を浮かべるは疑問を口にした。


「それは分かるけど・・・あのセブルスがを誘うかしら?」


になにかと付きまとわれているセブルスの事だ。

自分からを誘うというのは考えにくい。

しかしは何も気になる事はないのか上機嫌でスキップしながら扉へと向かう。


「まぁ、いざとなったら服従の呪文使ってでも一緒にパーティー行くからいいも〜ん♪」

「「・・・・((セブルス逃げて!超逃げて!!))」」

「じゃあね〜ん!」


バタンッ


扉の閉まる大きな音をたてては外へと――恐らくスリザリンの寮へと向かった。

一気に静かになった自室で、とは互いに顔を見合わせる。


「さ、さすがちゃんというか・・・・」

「セブルスにはご愁傷様としか言えないわね」


クスリと笑いながらは紅茶のおかわりをカップへと注ぐ。

それを見ながらはベッドの端っこにあったハート形のクッションを掴むとぎゅっと抱きしめて小さく呟いた。


「クリスマスパーティー・・かぁ・・・・」


脳裏に浮かぶのは2個下のスリザリンにいる黒髪の彼だった。










クリスマスまであと一週間。


今年のクリスマスは一波瀾ありそうである。



















2010.11.24
クリスマス編。
ダンスパーティーあるとかないとかは気にしない方向^q^
次からはそれぞれの話となります。