パチカチパチッ・・・・・


誰もいなくなった生徒会室。
そこでひたすら算盤をはじき続ける潮江の姿があった。
この学校の生徒会会長であり、学校の委員会における経費を管理する男。
潮江文次郎。鬼の生徒会長として恐れられている。
遅くまで学校に残り帳簿をつけていく潮江以外、生徒はもう残っていないようだった。
一人をのぞいて。


コンコン


控えめにドアをノックする音に顔をあげず声だけかける。


「入れ」
「失礼します」


か細い声に顔をあげるとそこには同じ生徒会役員であるの姿があった。
思わず驚いて動かしていた手をとめる。


「・・・どうしてお前がここにいんだ。帰ったんじゃねぇのか」
「あっ、はい・・・一応帰りましたけど・・・」


びくりと肩を震わせておそるおそる言葉を紡ぐ。
しんとした部屋の中、二人きりでなおかつ潮江に見られているという状態で自然との胸がドキドキと高鳴る。


「せ、先輩の事が心配で・・・・家から差し入れを、と・・・・」
「・・・・バカタレぃ」


の手にある缶コーヒーを見て目を細める。
ドアのところで突っ立ったままのに声をかけると、ゆっくりとが近づいてきた。


「・・・・先輩、どうぞ」
「あぁ」


受け取った缶コーヒーから伝わるあたたかい温度。
秋も終わりを告げ冬を迎えようとしているこの時期にはとても嬉しい差し入れだった。


「・・・終わりそうですか?」
「ん?あぁ・・・」


潮江はちらりと自分の手元を一瞥する。
正直なところ、まだまだ終わりそうも無い。
だがの性格からしてきっと終わらないことを知れば残って一緒に作業をしようとするだろう。
少し悩んだ後、ゆっくりと頷いた。


「そうだな。明後日の予算会議には間に合うだろう」
「そうですか・・・・では、手伝いますね」
「な・・っ」


着ていたコートを近くの机に脱ぎ置くと、潮江の近くの席に座りだした。
自分の電卓と筆記用具を取り出し、さも準備万全だと言わんばかりだ。
帰らせるつもりで言った言葉なのに真逆の行動をとったに潮江は声を荒げる。


「お、おいっ。聞いていたのか。もうすぐ終わるから別に手伝いなんて・・・」
「このままのペースだと明後日の予算会議には間に合うのは今日遅くまで残ってやった結果、って事ですよね先輩?」
「・・・っ!」
「元々お手伝いするつもりで戻ってきたんです。・・・・・それとも、先輩は私がいちゃ迷惑ですか・・・?」


じっと無垢な瞳で見つめられて、言葉が詰まる。
俺が言った言葉の意味もお見通しって訳かよ・・・。
深く溜息をつくと貰った缶コーヒーを一気に傾けてごみ箱狙って投げ捨てた。


「・・・ったく。あんまり遅くまではやらんからな」
「はーいっ」


嬉しそうに笑うの声がくすぐったい。
それから二人は言葉を交わす事もなく、黙々と目の前にある紙と睨めっこを始めた。


どれくらいの時間が経っただろうか。
ずっと算盤を弾き続けていたおかげで、最初に比べてだいぶ埋まった帳簿に潮江は漸く俯けていた顔をあげる。
時計を見ると、夜の7時半を指しており、まずいと思ってを見れば、彼女は机に顔を突っ伏して寝てしまっていた。


「おい・・・っ」


軽く肩を揺すってみるが起きる様子はない。
それどころか唸ってもぞもぞと温もりを求めるように腕が絡みついてきた。


「さむい・・・・」
「お前・・・っ」


潮江の大きな背中に腕を回すと気持ちよさそうに胸に頬を摺り寄せてくる。
体温の温かさにほっとしたのかはまたすやすやと寝入ってしまう。
肩を掴んで引き離そうとするが、その度に拒むようにの腕にますます力がはいっていく。


「せん、ぱい・・・っ」
「・・・っ」


息をはきながら囁くの声にぞわりと粟立つ。
誰もいない生徒会室。来るとしたら見回りの職員が回ってくるだけ。
背中に回された腕を優しく解くと、そのまま長机の上に寝かせる。


「お前が悪いんだからな・・・」


宙に浮く足の間に難なく体を滑り込ませると、の顔のすぐ横に手を置いてそっと唇を重ねた。
最初は様子を窺うように重ねていただけのものが、じょじょに荒々しいものへと変化する。
舌を滑り込ませ、絡ませながら吸い上げてやればの瞳がじょじょに開いていく。


「・・・っ・・?!せん、ぱ・・・っ」
「黙れ」
「・・・んぅっ」


開いた口を塞ぐように再び唇を重ねる。
今度は最初から舌を絡めあう激しいキス。
苦しげにぎゅっとがワイシャツを掴んでくる。


「はぁっ、はぁっ、せんぱ・・・っ」


そっと片手を胸に這わせればびくりと体を震わせる。
だけど抵抗はなく、ただじっと潤んだ瞳で見上げてくるだけ。
の真意をくみとろうと視線を合わせれば胸の上に置いたままの手に己の手を重ねてきた。


「先輩・・・っ、私、私、先輩の事が好きなんです・・・・っ」
「・・・」
「は、はしたないのは分かってます。だけど、私、先輩にこうされて凄く嬉しいんです・・・」


顔を真っ赤にさせて、緊張のあまり手が少しだけ震えている。
それでも必死に自分の気持ちを言葉にしようとするに目を細めた。


「先輩の気まぐれでも何でも良いんです・・・っ、先輩・・・私を抱いてください・・・っ」
「・・・っ」
「私を先輩のモノにしてください・・・っ」


恥ずかしさに耐え切れず目を瞑ってしまったに荒いキスを送る。
激しさのあまりに時折歯と歯がガツンとぶつかり合う。
の意識を口へと向けている間に手早くの衣類を乱していく。
見えてきた可愛らしい下着を押し上げると、柔らかそうな形の良い胸が露にされる。


「あっ、恥ずかしい・・・っ」
「お前から言ってきた事だろ」


やんわりと揉み上げれば、甘く高い声が発せられる。


「先輩・・っ、せん、ぱ・・・いっ」
「名前で呼べよ・・・」


触れるだけのキスを口に落とすと、ツンと勃ってきた乳首を弄る。
の口から甘い声がでてくるたびに中心に熱が集まっていくのを感じた。


「・・・っ」
「あぁっ!もんじ・・・ろ・・せんぱ・・・っ」


恥ずかしげに身を捩るを押さえてそのまま手を・・・・

















「・・・い・・・せ・・ぱい・・・・先輩っ!!!」
「・・・・・あぁっ!?」


遠くから無粋な声が聞こえる。
何事かと思い、薄らと目を開けてみればすぐ近くに三木ヱ門の顔が。


「うわああああああああっ!」
「うわあああああああ!!?」


頬を赤く染めた愛らしいの姿はそこにはなく、後輩である田村三木ヱ門がいた。
あたりを見渡すがの姿は無い。


「・・?・・・??」
「・・・あの、先輩・・・・」


眉間に皺を寄せながら黙り込む潮江に言いづらそうに言葉を紡ぐ。
三木ヱ門はどこからともなく鼻セレブを取り出すとそっとそれを差し出した。


「とりあえず・・・・鼻血、出てます・・・・・」


そこで漸くさっきのは自分の中の妄想だったと気づく潮江だった。






























無言で鼻血はやめてください







(潮江先輩が眉間に皺を寄せながら無言で鼻血を出すのは怖すぎる・・・・)







2009.11.11




ギンギーン!ギーン!