「ー!おっぱい揉ませてくれっ!!!」
「今日もでやがったなこの変態野郎」


これでもかっていうくらいに眩しく無邪気な笑顔を見せてとんでもないことを言いのけるのは、同じクラスの男子生徒。七松小平太だ。
ああ、この学校に入学したのが運の尽き。
入学してから、なぜか私はこの七松に目をつけられ、追いかけられる学校生活をせざるをえなくなった訳である。
平凡で、まったりとした学校生活に憧れを持っていた私の淡い夢は打ち砕かれたのだった。


「なーなー!良いだろう?の事好きなんだし」
「七松が好きなのは私ではなくおっぱいだろうが」
「いや違う!が好きなんだ!」


胸に視線を向けたまま言われても説得力が無い。
そろりと伸ばされた手を素早く叩き落とす。
この俊敏な行動をとれるようになったのも、この学校にきてから会得したものだった(というかせざるを得なかった!)


「学年一、二を争う大きさと言われているのおっぱいはとても魅力的で顔を埋めて毎日でも触って私の手で愛してあげたいが、それとは別に全部が好きなんだ!」
「いや、前者の部分言ってる時点で後者がとってつけたようにしか聞こえないよ」


そして、その手つき!
わさわさと両手を動かして今にも飛びついてきそうだ(きもちわるいっ!)
身の危険を感じた私は救世主の下に向かうために、席を立つ。


「あ、!?」
「アンタに付き合ってたら埒があかないわっ!」


走って教室を飛び出すと、廊下も気にせず全速力で駆け抜ける。
右側通行なんて知ったこっちゃない。だってそんな悠長な事を言っていると・・・


「なぜ逃げる!?まて、!!」


こうやって追っかけてくるからである。
頭に花が咲いてるおっぱいバカな七松だが、これでも体育委員会の委員長。
そして私は七松よりも足の速い人をこの学園内で見たことが無い。というか間違いなくいないと思う。
そんな人間離れした俊足持ちの七松相手に頑張って走る私を誰か称えても良いと思う。


「アンタがおっかけてくるからよおおおっ」
「が逃げるからだろおおおおおお」


目指すは図書室。
教室をでて左にまっすぐつきすすめば、奥にひっそりとある教室に今日も私は助けを求めて駆け抜ける。
―――見えたあああっ!


ガラッ!


勢いよく扉を開けて中に滑り込む。
急ブレーキに耐えかねて前のめりに倒れそうになるところを誰かに支えられる。
ふと顔をあげると、そこには私の救世主(フェアリー)が立っていた。


「・・・中在家・・・っ!」
「!!・・・・って、あああああああああっ長次いいいいいいいいいいっ」


数秒後、を追って慌しく図書室に入ってきた小平太は大声をあげる。
ドカドカと近づいてくると、を長次から離そうと腕を掴もうとするがそれを制したのは他でもない長次だった。


「!・・・長次・・・」
「・・・・・」


背中に庇われるようにして前に出た長次をは見上げる。
その様子を見て小平太は長次と対峙する。


「お前まで・・・私の邪魔をするのか・・・っ!」
「・・・・図書室は、静かに・・・・」
「〜〜〜〜〜っ!」


ギリギリと奥歯を噛み締める小平太を静かに見下ろす長次。
傍から見て、まず会話が噛みあってないことは一目瞭然だった。
だがしかし、七松小平太は”暴君”という呼び名で恐れられている人物。
当然人の話を聞くわけが無い。


「やむを得んな・・・・おっぱいの為なら私はお前を超える!!!」
「・・・・・・・」
「あああああもう、だめだこいつはやくなんとかしないとっ!!!」


もうここまでくるとある意味尊敬できてしまう。
どこからでてくるんだ。こいつのおっぱいへの執着心は。


はぁーっと深く呆れた表情で溜息をはくと、ぼそりと長次がに聞こえるくらいの声で呟く。


「・・・・今のうちに、どこかに行くといい・・・」
「え・・・っ」
「小平太は、今は私の事しか見ていないから・・・大丈夫」


さすが長年七松と共にいたと言われているだけはある。
あの野生児を扱うのは慣れっこのようだ。
は感動してふるふると震えると長次にぎゅっと抱きつく。


「ありがと、中在家っ」
「・・・・・・」
「ぬおおあああああ!おのれ、長次!に抱きつかれるなんて!羨まし・・・っ、じゃなくて、やっぱり許せん!!!」


長次の大きな背中に身を隠すように隠れるとそそくさとは本棚の間を縫ってその場を退散する。
そっと後ろを振り向くと、じゃれつく犬を適当にあしらう主の図にしか見えなかった。


「さすが、中在家・・・侮りがたし。私の唯一の救世主だわっ!」


後ろの扉からそっと出ると、図書室を後にする。
もちろん、中にいる小平太に気づかれないように慎重にそっと歩く。


「ふぅ・・・これで今日も一日安泰ねっ」


図書室からだいぶ離れては上機嫌に廊下を歩きながら教室へと向かう。
鼻歌を歌いながら気分は上昇。


だが、それが間違いだった。
は完全に七松小平太という人物を侮っていたのである。


ぐいっ


「へ?」


突然右手が引っ張られたかと思うと、開いていた教室に引きずり込まれる。
ガシャンッと大きな音をたててしまった扉。
なにが起きたのかさっぱりで、目の前でしまった扉を呆然と見ていると、突然体を這うなにかに体をびくりとさせる。


「な・・っや・・!?」
「やっと捕まえたぞ、」
「げげげげげげ!!!?なんで、アンタがここに!?」


顔だけ後ろにむければ、先ほど確かにまいたはずの小平太がそこにいた。
後ろからがっちりとお腹に回された腕。
身動きが完全にとれなかった。
まずい。これは非常にまずい。


「いるところ七松小平太あり、だ!!」
「後輩の台詞ぱくってんじゃないわよっ!っていうか、ちょ、放しなさいよっ」
「やだ」


遠慮なく抱きしめる腕にしめつけられるような痛みが体に伴う。
じたばたと暴れてみてもびくともしない。ああ、これが男と女の差ってやつか・・・・。


「・・・はぁっ・・・あ・・ん・・・気持ちい・・・」
「こ、こらああっ!ちょ、なに、やって・・・やっ、やだってば!」


がっしりと左腕での体を抱きしめたまま、無遠慮に右手が胸を弄ってくる。
服の上から好き放題に形をかえるくらいに強く揉まれ、そのたびにびくりと体が反応してしまう。


このままでは危ない!!!


「なぁ、。次の時間さぼってここでシよっか・・・」
「誰がするかっ!この変態!さっさと、はな、せ・・・っ!」


男と女では力の差は歴然。どうやったって力ずくでは抜け出せない。
だがしかし、女だからこその必殺技がある事をちゃんと理解していた。


「ん・・・・・・」
「・・・こんの、アホ松うううう!!!」


ゴチンッ


「いだっ!!」


勢いよく小平太の顎に向かって頭突きを食らわせる。
緩んだ腕を振りほどきさっさとそこから逃げ出す。


「・・っつぅ・・・の頭は石頭か・・・」
「失礼ねっ」


顎をおさえて少し後ろによろけた小平太をふんっと見つめる。


渾身の力をいれて頭突きをしたのによろける程度しかダメージを与えられないとは、さすが七松小平太。・・・恐るべし生命力・・・!


「あ、、パンツ見えてるぞ」
「・・・っ!!・・・ほんっとに、懲りないやつね・・・!!!」














隙あらばセクハラ








全く、油断も隙もないっ!!











2009.10.29



やりたい放題。