誰にだって苦手なものってありますよね?
考えてみてください。
その苦手なものにつきまとわれる毎日を・・・・


耐えられないよねっ!?この世の終わりだと思っちゃうよね!?


だからついその苦手なモノを”排除”するのも致し方ないのです。
たとえそのやり方が乱暴であろうと、女らしくなかろうと、さしたる問題ではありません。
一番問題なのは


「ねね、。僕の子を産んでよ」


平気な顔してこのようなことを言ってのける不破雷蔵だと私は思います。


くらり、と眩暈がする。
別に雷蔵のお天道様のような眩しい笑顔に目が眩んだわけではない。
なるべく視界にいれさせないように、首を反対の方向に向けると手に持っていた教科書で近づいてくる雷蔵の顔を止める。


「何回言ったら分かるの?私はアンタの子を産む気も、ましてや結婚なんて考えていませんっ」
「そりゃまだ成人じゃないもの。ダメに決まっているでしょう」
「いや、そういう問題じゃないから。ねぇ、ちゃんと聞いてた?」
「あ、はそんなに早く僕と結婚したいの?せっかちだなぁ」
「おい、ちゃんと聞けよコラ」


私と雷蔵の間にある教科書がお互いに引かれて悲鳴をあげている。
この一枚壁が無くなってしまえば、私は己の唇を守る術が無い。
こっちが頑なに守れば向こうも頑固に粘ってくる(ていうか力強すぎ!)


「ってば何恥ずかしがってるの?僕たち初めてじゃないでしょ」
「は?いや、初めてもなにも始まってすらいませんよ、私たちは」
「昨日のはいつもより積極的だったのになぁ」
「アンタどういう夢みてんの?ねぇ」


知りたい?と怖いぐらい笑顔で聞き返されて即座に首を横に振った。
怖くて聞きたくない。聞いたら日の当たるところで生きていく事さえ危ういんじゃないかってくらいに後悔しそう。


「はぁ・・・このままじゃ学校生活、彼氏が出来ないまま終わっちゃいそうだわ・・・・」


こいつの所為で・・・・・!
せっかくの青春時代に恋愛を謳歌しないで終わるなんて悲しすぎるっ!


何気なくぽつりと呟いた言葉に雷蔵はきょとんとした顔を浮かべる。
教科書を押し合いしていた手を離すと、考えるように顎に手をあてて唸り始めた。


「彼氏・・・?そういえば、A組のサッカー部キャンプテンの事が好きだったっけ」
「(ドキッ)は、はぁ!?な、な何いって・・・」
「先週病院送りにしたばっかりだけどもう退院したのかな」


ドタンッガタンッガシャンッ


「・・?、なに落乱お約束の倒れ方をしてるの?」


椅子から盛大に後ろに倒れた私に雷蔵はなお不思議そうな顔をして問いかける。
いやいやいやまてまて。どう考えたって今のはずっこけるでしょーがっ!!!


「は!?び、病院送り!?」
「うん。だっての視線を独り占めとかむかつくし」


それでここ最近先輩の姿が見受けられなかったのかーーー!!!
うああんっ、なんかごめんなさいっ!


自分と関わったせいで病院送りにされてしまった先輩に涙ぐんでいると、ぽんっと雷蔵は手を叩いて「ああそうそう」なんて言い出した。


え、なに。まだあるの(超嫌な予感)


「隣のクラスのT山もに近づこうとしてたから牽制しといたし、1年にも生意気にのアドレス聞き出そうとしてたやついたから消しといたよ。ああ、3年にもそういう人がいたな。全く困ったものだよね〜」
「一番の困りものはお前じゃああああああああ!」


ってことはあれですか。
最近、なんか男子が余所余所しく接してくると思ったら全ての原因はお前か!不破雷蔵!!


通りで恋が芽生えない筈だよ。芽生える前に摘まれていたんだから。


「不破・・・っ!」
「ね、」


悪態をついてやろうと口を開いた唇にそっと人差し指が添えられる。
思わず口籠もり黙った私に不破は内緒話をするように声のトーンを下げて囁いた。


「邪魔者退治もいい加減めんどいし、ここで愛を誓っちゃう?」
「・・・!?」


あいていた左手をとられ、ちゅっと薬指に口付けられる。
その事に声にならない叫び声をあげるとあろうことか指を絡めてきた。
そしていつものあの笑みで、にこやかに言うのだ。





「ね、」














結婚しよう今ここで








だから、しないって言ってるでしょばかー!








2009.10.29



だんだん変態がよく分からなくなってきた