「くっそ・・・どこいったんだよ・・・っ」


森の中、木々を掻き分けて獣道を歩いていく。
迷子の次屋を捜すのはいつもの事で、別に今になって嘆くような事でもない。
だけど、今日はいつもとは違う。


「なんで、アイツ連れてくんだよ・・・っ!」


次屋が一人で迷子になった訳ではなかった。
一緒に行きたいと言ってついてきたくのいちのを連れて二人していなくなってしまったのだ。
二人が一緒にいなくなってしまった事に、ざわざわと胸が落ち着かない。


「・・・っ」


早く見つけないと。
その事ばかりが富松の頭の中で何度も何度もリピートされていた。


「ー!いるなら返事しろよー!」


だんだんと森の奥深くへと進んでいく。
少しでもに声が届くように。富松はいつもより声を張りの名を呼ぶ。


次屋がひそかにに想いを寄せているのには気づいていた。
だからこそ、今日トレーニングに裏々山に来るときについてくるって言ったを拒まなかったのだ。
迷子になったのは意図してやったものではないと分かっているが、その時の手を引いて一緒にいなくなった事には、なにかしら思惑があるようにしか思えない。


「もしアイツがに告白なんてしたら・・・・」


二人と一緒にいる時間が長い富松は、二人が仲が良い事はもちろん知っている。
に好きな人がいるという話は一度も耳にしたことはないが、絶対付き合わないという確信は出来なかった。


「ああもう・・っ!」


悪い方向悪い方向へと想像してしまういつもの癖。
でもそれが拭えない位に今、ものすごく、胸がドキドキいってんだ。
ひょっとしたら、俺は居ない方がいいのかなとかも思ってしまったりもしていて。


どうすればいいのか分からないんだ


「あっ・・・!」


草陰からチラリと桃色の装束が見えた。
急いでそちらの方へと駆け出す。
次屋がいるとかいないとか気にならなかった。
とにかく、今はただ、を視界に留めたい―――!


「!!」
「え・・っ・・・作兵衛・・・?」


ガサリと草をかきわけると、そこには案の定が居た。
座り込んでその目にはうっすらと涙さえ浮かべている。
俺の姿を見て心底安心した顔を浮かべた。(別に自惚れてる訳じゃないけどそう見えたんだ)


「さ・・作・・さくべえ・・・っ」
「お、おい。どうしたんだよ」


それに次屋は。


その言葉は続かなかった。
近くによった俺にが力いっぱい抱きついてきたから。
突然の事に動揺するが、体というものは正直で、しっかりとを抱き返していた。


「・・っ・・・三之助が・・・どっか行っちゃって・・一人になっ・・」
「あーもー分かったから。なんも言うな」


しがみ付いてくるの頭を自分の胸に押し付ける。
そうするとよりいっそうがぎゅっと近づいてきた気がした。


「早く、三之助も・・・さがさ、ないと・・・っ」
「・・・・うん」
「三之助も・・・一人で寂しい、よね・・・」
「・・・・・・」


ああもう、三之助三之助って・・・!


「」
「え・・っ」


の肩を掴み距離を置くとそのまま噛み付くように唇を重ねた。
勢いあまったせいでガツンと歯がぶつかり合う音もしたが、そんなの気にならない。


「・・っ!」


目を大きく見開いて自分を見つめるをしっかりと見返して、更に唇の間から舌を滑り込ませての舌を吸ってやった。
苦しそうにぎゅっと上着を掴んでくる手も、耐えかねなくなって目を強く瞑ったのも


全てが愛しい。


「ちゃんと探しに行くから」






だから、今は俺だけを見て、感じて。

















俺以外見るんじゃねぇ




(勢いあまってやっちまったー!)










2009.10.27



富松ー!好きだー!