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「あれ、どうしたの?ちゃん」
「あっ!雷蔵くん・・っ!」
街中に見慣れた子がこそこそと物陰に潜んでいるのを見て声をかけてしまった。
声をかけられたは相当驚いたのか肩をびくりと震わせてこちらを見ると、キョロキョロと辺りを見回してからこちらへと駆け寄ってくる。
「え、っと・・・ちゃん?」
「は、話はするから、とりあえず一緒に来て!」
「わっ」
ぐいっと左手をひかれたかと思ったら、近くにあった喫茶店へと入り込む。
なるべく日陰のところで、と言ったの要望に応えて店員は奥のボックス席へと案内した。
席についてメニュー表を見たところで気づいたが、どうやらケーキ屋さんだったらしい。
「雷蔵くんは甘いもの好き?ここのガトーショコラは本当に美味しいのよっ」
そう言って笑顔で勧めてくるに頷いて、彼女と同じものを頼んだ。
店員がいなくなると同時にふぅと息をはいたにもう一度同じ質問をぶつけてみる。
「それで、何をしてたの?」
「あっ!え、ええっと・・・」
言葉を選ぶように言いよどむを不思議そうに見返す。
ああでもないこうでもないと悩む姿はまるで自分を見ているようで少し面白かった。
そうこうしているうちに、先程の店員がやってきて目の前にケーキと紅茶を置いていく。
それらに一瞬目をやったあと、は意を決したように口を開いた。
「・・・・あそこ、見えるかな・・・・」
「え?」
おそるおそるといった感じに指をさす方向に振り返ってみる。
そこには、同じくお茶をしているのであろう斉藤タカ丸の姿が。
そしてそのむかえにはとても綺麗な女性が微笑んでタカ丸と談笑している。
「うわ、綺麗な人・・・」
思わず呟いてしまった言葉にのフォークがカシャンと皿の上に落ちる。
その音に顔を元に戻して目の前に座るを見ると、慌てて落としたフォークを握りそのままぎゅっと握り締めていた。
「だ、よねぇ・・・・」
「ちゃん?」
「・・・っ」
「わっ」
フォークを握り締めたままぽろぽろと涙を流しはじめたに雷蔵は慌てる。
鞄のなかから綺麗なハンカチを取り出すと、そっとに差し出した。
「・・・あっ、ご、ごめんっ。何泣いてるんだろ・・・っ」
「え、あ、ううん。その・・・・ちゃん、もしかして・・・・」
タカ丸さんの事が好きなの?
そう聞こうと開いた口がの言葉によって制された。
「あんなにカッコイイ人だもん・・・つりあう訳ないよ、ね・・・分かってたんだけど・・・っ」
雷蔵から受け取ったハンカチを申し訳なさそうに目元に使うと声を詰まらせた。
そんなを見てからもう一度タカ丸の方へと視線をうつす。
二人の様子を見る限り、おそらく恋人同士という事で間違いは無いのだろう。
「ああ、もうやだな。雷蔵くんに迷惑かけちゃうし・・・泣くつもりなんて無かったのに」
「あ、僕は大丈夫だよ?」
にこりと微笑んでやるとは安心したように笑い返してくる。
それから手をつけていなかったケーキを食べようと一緒に手をすすめる。
そんなを見ていると、胸の奥がゾクゾクする感覚に陥った。
ああ、なんだろう。この感覚は。
泣いているを見てもっと泣かせてみたいと思ったのだ。
その涙を自分の為だけに流して欲しいと思ったとき、雷蔵は更に笑みを深くした。
雷蔵がとても楽しそうに笑っているのを見ては不思議そうに見返す。
「雷蔵くん?ケーキ気に入ってくれたのかな?」
「あ、うん。とっても・・・美味しいよ」
「それは良かった・・・っ」
が笑顔になればなるほどその顔を歪めたいと思うこの気持ちは何だろうか。
ごめんね、傷ついてるのに笑ってて
君の傷つけるには何がいいのかな
考えるだけで楽しくって仕方がない
2009.10.17
あ、あれ・・・雷蔵ってどんなキャラ・・・
また思っているものとガラリと変わりました。