好きすぎてどうにかなってしまいそう。


ぐったりと布団の上に寝転がってぽふりと枕に顔を埋める。
埋めたかと思いきやまたごろごろと転がり、再び枕に顔を埋める。その繰り返し。
そんな級友の行動を静かに本を読みながら見つめる。


「・・・・小平太」


ぼそりと呟かれた声に視線だけをやる。
本をめくりながら長次は静かに呟いた。


「なら、今日、図書室に来る・・・・」


その言葉を聞いてがばりと上体を勢いよく起き上がらせる。
ぼさぼさになっている髪の毛をそのままに、ぱちぱちと目を丸くして瞬きをさせる。


「ほ、ほんとうか・・・?」


小平太の方を見ずに静かに頷く。
相変わらず視線は手元の本に注がれている。
思わぬ長次からの情報に立ち上がると、すぐさま部屋を出て行った。


毎日でも会っていないと気がすまない。
いつでも触れ合っていたいほどに、好きなんだ―――!


小平太は急いで図書室へと向かう。
大好きな大好きな彼女がいる事に胸が弾むのを抑えられず、大きな音をたてて廊下を走る。


ピシャンッ


勢いよく図書室の障子を横に引く。
すると、中には想い人であるがいた。
嬉しくて声をかけようと中に足をすすめるが、そこでが一人じゃない事に気づく。
と楽しげに会話を交わしているのは同級生の立花仙蔵だった。
2人は小平太に気づいていないのか、ひとつの本を一緒に見合い、仲睦まじく笑いあっている。


「・・・・・」


障子を掴んでいた手に力が入る。
みしみし、と音をたててしまいそうな程に力強く握ってしまう。
ついに障子が破けてしまうのではないか、という所でふと顔をあげたが入り口に佇む小平太を見つけ、にこりと微笑んだ。


「小平太」
「・・・・・・・」


の声に少しだけ力が弱まる。
それでも隣にいる仙蔵が気に入らなくて、そこから動けずにいた。


「どうしたの?こっちにおいでよ」


不思議そうに首をかしげたあと、は小平太の大好きな笑顔を浮かべて笑いかける。
その柔らかい声に押されるように漸く障子から手をはなすと、ずんずんと大股でと仙蔵の元へと歩んでいく。
近くにまで来ると、を後ろからぎゅうっと抱きしめて仙蔵との距離をあける。


「こ、小平太?」
「仙蔵・・・・・」


突然の事に驚くをよそに、じとり、と仙蔵を見る。
小平太のギンッとした視線にやれやれと肩を竦めると、仙蔵は口の端をあげて言った。


「も大変だな」
「え?どういう・・・」
「では、私は失礼させてもらうよ」


ひらひらと軽く手を振るとさっさとその場からいなくなる仙蔵。
図書室には、と小平太の2人きりだ。
近くで感じるあたたかい小平太のぬくもりにそっと目を細めると、頬にもあたたかいものが触れる。


「・・・・」
「ん、どうしたの、小平太っ」


すりすりと擦り寄るように頬擦りをしたかと思いきや、ぺろりと頬を舐められてくすぐったさに身を捩る。
まるで犬のようだ、とは心の中で呟いた。


「ずっと、と一緒にいたいんだ・・・」
「どうしたの、急に・・・」
「ん・・・」


ぼそりと呟くと小平太はそのままの唇に噛み付いた。
ゆっくりと下唇を食むように口を動かし、唇をぺろりと舐め上げる。
その反動でうっすらと開いたの口の中に自分の舌を差し入れると、絡みつくような口付けをする。


「はっ・・・・ンっ・・・」


息苦しさに顔を逸らそうとするの両頬を掴んで、逃がさないといわんばかりに奥へ奥へと舌が進んでくる。
長い間互いに舌を絡ませていたため、どちらともいえない唾液がつぅっと口の端をたどって落ちていった。
ぎゅっと瞑っていた目をそうっと開くと、自分を熱っぽい視線で見下ろす小平太と目が合う。


「・・・好き・・・」
「私、も・・・好きだよ・・・」


肩口にそっと頭を預けてきた小平太をぎゅっと両手いっぱいで受け止める。
目の前にある白く透き通ったの喉元に小平太は愛しげに噛み付いた。













どうやら、君には依存性があるらしい








もう君がいない世界など考えられない








2009.10.14



暴君になりきれなかった・・・・