「ふぅ・・・・」


普段の桃色の忍び装束とは違い、華麗な模様が描かれた小袖を着込んだは小さく息をはく。
綺麗に手入れされた髪や、薄く化粧の施された顔。
そこには普段元気に授業を受ける姿とは違い艶やかさが残る女のがいた。


「はぁ・・・」
「いつまで溜息ついてるのっ!ほら、いくわよ、ちゃん」


そう言っての手を引いたのは同じくくのたまとして生活しているユキだった。
ぐいぐいと引っ張るユキに抵抗が出来ず、そのまま大人しくついていく。


今日はくのたまで外での実習授業。
内容は誰でも良いので殿方一人と一晩過ごすこと。
一晩共に過ごすという事は、房事もあるかもしれないという事で・・・。


「うまくできるかなぁ・・・・」
「何言ってるの、ちゃん。これもくのいちになるためなのよ」


暗い顔をしているを心配そうにユキは覗き込む。
が心配になってしまうのは分かる。
だが、そうこういっているうちにどんどんと実習時間が過ぎてしまう。


「なにも一緒に寝れって言ってるわけじゃないのよ。それに、殿方に主導権さえ渡さなければこっちのモンよっ」


自信気に言うユキの言葉は最もだ。
忍びたるもの、相手に全てを委ねてはいけない。
隙を見せてはいけないし、逆に相手が隙を見せたのならばその一瞬につけ込まなければならない。
それは分かっているのだが・・・・


「ほーら、心配しなくても大丈夫っ!さ、いくわよ!」
「・・・あっ、ま、待ってよユキちゃん!」


もたつきそうになるのをこらえて慌ててはユキの後を追っていった。
そんなやりとりをこっそりと覗いていた人物が2人。


「うあー・・・大変だなぁ。って事は今日一日くのたまは学園にいないのか」
「・・・・・」
「で、どうするんだ?兵助・・・・って、おい!」


気配をけして屋根から覗いていたのは五年生の竹谷と久々知だった。
久々知とは互いに好きあっている言わば恋仲の関係である。
そんなの初めての房術を使っての実技と聞いて心配をしない筈が無かった。
それに、あんなに綺麗に着飾ったを見知らぬ男のもとに行かせるとなると我慢できない。


「明日には帰るから」
「明日って・・・・はぁ・・・気をつけて行ってこいよ」
「ああ」


久々知の言わんとすることに察した竹谷はこれ見よがしに大きく溜息をつくとひらひらと手を振って見送った。
私服姿で颯爽と学園を出て行く久々知に竹谷は再度溜息をつく。


「良いよなぁ・・・・想い人がいるって」


悲しい事に自分にはそういう相手がいない。
なんだか言ってて悲しくなってきたのでそろそろと屋根の上から降りる。


「竹谷八左ヱ門せんぱああいっ!また毒虫が・・・っ!」
「・・・・さーて。仕事にもどるかぁ」


後輩の泣き言を聞きつけると、竹谷は声が聞こえた方向へと駆け出していった。






















「うーん・・・」


たくさんの人が行き交う橋の上でぽつんと立ちすくむ。
先ほどまで一緒にいたユキはというと、さっさと殿方をひっかけてどこへ行ってしまっていた。
自分から声をかける、という事が出来ないはおろおろとそこに立ちすくむだけ。


「このままだと不合格になっちゃうよぉ・・・っ」


だんだんと陽がくれ始めて、のなかに焦りが生じる。
自分だけ不合格となる事は避けたかった。
それになにより、自分よりも年下のユキに先を越されてしまったのがなんだか情けない。
次、自分の前を通りかかろうとした人に声をかけようと意気込んだとき、ぽんっと軽く肩を叩かれた。


「」
「!? あ、兵助・・・」


突然の事に驚いたものの、見知った人物だと分かると肩の力を抜き、ふにゃりと笑う。
しかしどうしてここに兵助がいるのだろう、と不思議そうに首を傾げる。


「どうしてここに?」
「ん、が心配だったから来た」
「・・・えっ!?」


目を大きく見開いて見上げてくるの肩を引き寄せると、そのままどこかに向かおうとしているのか歩き始める。
つられるようにしての足も動くが、それでも釈然としないのか久々知を見上げて声を潜めながら呟く。


「心配、って・・・」
「今日実技で外に来ているんだろ」
「えっ、う、うん・・・」


恋仲である久々知に知られたくは無くて、話していなかった筈なのに
それを知っている事に更に驚いては頷く事しか出来なかった。


「分かってるんだけど、やっぱりが他の男と一緒にいるのは嫌なんだ」
「兵助・・・・」
「それに」


そこまで言いかけて久々知は歩む足をとめる。
ぴたりと止まった視線の先には、こじんまりとした宿屋があった。
そこで漸く意味を察したは顔を真っ赤にさせて俯いてしまう。
綺麗に結い上げられて見える項にそっと手を這わせると久々知は笑った。


「誰でも、良いんだろう?」


耳元で囁かれた言葉にの顔はますます赤くなってしまい見られたくない一心で俯く。
だが、ぎゅっと自分の袖を握り締めて小さくこくこくと頷くに肯定だという事を悟ると久々知は嬉しそうにの肩をひきながら中へと入っていった。




宿屋に入り、案内された部屋へと向かえば当然布団はひとつしか敷かれていなかった。
座るところに困り、立ちすくんでいるの事はお構いなしに久々知はその布団へと腰掛けると、の腕を引っ張る。


「きゃっ」
「なに緊張してるんだ?初めてでは無いだろ」


重力にひかれて倒れこむようにして久々知に覆いかぶさる。
ぎゅっと首にしがみついて、顔を覗けば目元に唇を押し付けられる。
がっちりと腰に腕を回されており、退く事も出来ずただ与えられる口付けに目を瞑って耐える。


「・・・・んぅっ」
「・・・・」


最初は目、鼻、頬と軽く触れるだけの口付けが唇に触れると、それまでのものとは比べものにならないほどに荒々しく激しく口内を弄ばれる。
苦しくて酸素を得ようと開いた口から舌が入り込み、より一層激しさが増す。
全身の力が抜けていき、久々知にしがみ付くのが精一杯だ。
愛しげに下唇を吸われ、漸く離れた久々知の顔を上気した顔で見つめる。


「・・・・可愛い・・・」
「・・あぁっ、やっ・・・」


布団の上にそっと押し倒すと、腰紐を緩め、合わせ目から手をもぐりこませる。
直に触れてくる久々知のぬくもりにびくりと体を震わせる。
ぎゅっと布団を握り締めて与えられる快感に耐えるようにただ喘ぐ事しか出来ない。
弧を描くように指先での敏感な乳首の先端を捏ね回しながら、反対側を丹念に吸ってやる。


「はっ・・・あぁっ・・・ンンッ」


疼くような痺れが下腹部に集まっていくのを感じ、鼻先から熱い吐息が漏れる。
我慢ができないかのように、胸にいる久々知の頭をぎゅっと押し込むように抱きしめた。


「我慢できない?」
「ン・・ッ・・・はぁっ・・・へい、すけぇ・・・っ」


じっと見つめてくる視線に耐えられず、ぶんぶんと首を縦に振る。
力強く瞑られたその瞳の端には生理的に溢れた涙が浮かんでいる。
その涙をそっと舐めとると、が着ていた小袖を全て取り除いてやった。


「胸だけでここまで感じちゃうのか」
「ひゃっ・・・恥ずか、しい・・・っ」


露にされたの秘部を見つめ感嘆の息をはく久々知。
その視線に耐えられなくて自らの腕で顔を覆ってしまう。
しかしそれも一瞬のうちで、強く花芯を吸われるとビクビクと腰を震わせ腕は布団に投げ出されてしまった。


「ああっ・・・そ、こは・・・っ・・・はぁっン」
「ごめん、・・・久しぶりだから・・・・手加減出来ない」


大きくの脚を左右に開くと、花芯を執拗に舐めあげながら熱く蜜に塗れた蕾に指を差し入れる。
花芯と蕾を同時に嬲られ、ビクビクと体が跳ねてしまうのを抑えられない。


「ん・・・んんっ・・・はぁっ・・・」
「・・・良い・・・?」


ヒクつくの蕾はもう限界が近づいていて、切なげに見上げてくる久々知にすがる様に頷いた。
早くこの熱をどうにかして欲しくて、口付けながら熱い肉茎を押し当てる久々知の首にしがみつく。
先走りで濡れた堅い切っ先を何度か行き来させたあと、勢いよくの蕾の中へと押し入れた。
びりびりと甘い痺れが全身に駆け巡る。


「ああっ・・・あっ・・・んぅっ」
「はぁっ・・・・・・っ」


細い腰を掻き抱いて上下に揺さぶる。
その度にの胸の先端が擦れるように久々知の胸板にあたり、それすらも快感を得る要因となる。
足を抱えなおし、更に大きく広げると激しく抽送を始める。


「ひぅ・・・あっ・・・あぁっ・・・ンンっ」


激しい快感から逃れようと腰が浮くのを押さえつけて、奥へ奥へと堅い切っ先を押し上げていく。
ぎゅうっとすがるように背中に回されたの腕に力がこもる。
涙をため潤んだの目尻に久々知は優しく口付けると、腰を揺さ振っていく。


「あぁっ・・あっ・・へい、すけ・・・っ・・ンっ・・・あああっ!!」


白い喉を仰け反らせ、感極まったようにが身体を引き攣らせたのと同時に、熱い飛沫が奥深くへと放たれる。


「はぁっ・・・あぁっ・・・・」


ぐったりと布団に倒れこむに愛しげに口付けを落とす。
汗ではりついている前髪を優しくよけると、額にも口付ける。


「へいすけ・・・っ」


ほぅっと息をはいたのも束の間。
腰をひかれうつ伏せの状態にさせられると、後ろから熱いものを押し当てられる。


「え・・・っ」
「手加減出来ないって言っただろ?」


熱を放ったばかりだというのに、すぐに堅さを取り戻している久々知に顔を真っ赤にさせる。
制止の声を出そうにも中へと押し入ってくる久々知の熱に、甘い声しか出てこなかった。





















君の熱が足りない















2009.10.14


久々知君は好きだけど書きにくいので難しいです。