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「こんにちはーっ」
「! あ、あれ、ちゃんっ」
保健室に間延びした声が聞こえてくる。
新野先生が不在の今、保健室の主は保健委員長である善法寺伊作。
そして、今保健室へと訪れたのは同級生のくのたまであるだった。
「どうしたの?怪我でもした?」
「え、っとおー・・・・」
口元に指をあててうーんと唸る。
その間も伊作はじっと彼女の事を見つめる。
よく手入れされたふわふわの髪。
仄かに香ってくる花の香り。
そして、ひきしまり女性としての魅力が溢れ出ている体。
さすがくのたま最上級生というべきか。
にはくのいちとして感じる色気があった。
そしてなにより、伊作の想い人でもある。
そんな彼女を前にごくりと喉がなってしまうのを抑え、手が止まってしまっていた薬品の整理を続ける事にした。
は伊作の後姿を見つめながら近くに敷いてある布団に腰掛ける。
「少し休みたいんだけど、良いかな?」
「うん?良いよ。具合でも悪いの?」
「ん・・・・・」
小さく返事をしながら黙り込んでしまったを不思議に思い振り返ってみると
布団の上でねこのように丸くなりすやすやと眠る姿があった。
「・・・・寝たかっただけなんだね」
くすくすと思わず笑ってしまう。
風邪をひかないように、と掛け布団を手に取るとそっとの上にかけてやる。
伏せられた長いまつげが目にはいり、トクンと胸が高鳴る。
はぐっすりと寝てしまい起きる気配がしない。
「・・・・」
うっすらと赤く色づいた唇が目に入る。
布団をかけてあげた手が肩にいき、ぐっと力をこめる。
ゆっくりと、ゆっくりと。そっとその唇にだんだんと近づいていく。
甘い香りがより一層強く感じた。
「っ」
唇に触れようとした瞬間、ぱちり、との目が開く。
驚いて顔を退こうとするが首に回されたの腕によってそれは阻止された。
「、ちゃん・・・っ」
「伊作くん」
じっと自分を見つめてくるは咎める様子でもなく、ただじっと自分を見つめてくる。
黒く大きな瞳にのまれてしまうかと錯覚してしまうほどに。
「いいよ」
「・・・え」
「して、いいよ?」
くすりと笑ったの顔はとても艶やかで「ああ、やっぱりくのいちなんだなぁ」って頭のすみで思ってしまった。
離れてしまった隙間を埋めるようにはぐっと腕に力をこめて伊作の顔を近づける。
抵抗はせず、そのままの口に吸い付いた。
「ちゃん・・・・僕、君の事が好きなんだ・・・」
「ん・・・嬉しいよ」
目を細めて笑うにまた口付ける。
何度も、何度も。
啄ばむようにの唇に口付けていく。
「伊作くん・・・・」
「うん?」
「私が保健室に来たのはね・・・・・」
目が合うと、どうしていいのかわからない
貴方に会いに来たからよ
2009.10.14
お題と少しずれてしまった感が(いつもの事ですが)